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東京高等裁判所 昭和27年(う)3059号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(判旨)

起訴状において指摘さるべき公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならず、訴因は構成要件に該当する事実の表象である所から云つて、公訴事実として指摘さるべきものは、構成要件に該当する具体的事実でなければならない。そこで、事実の具体性とその具体性の内容たる特殊性とを明確にする事項である限り、これを記載することは、まさに理の当然とする所であつて、これを記載することこそ、訴因制度の理念としての被告人の防禦の準備に役立つものといわなくてはならない。もつとも、起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならないのであるから、たとえ事実の具体性を明確にする事項であつても、その記載がこの禁止に牴触するがごときものであつてはならないことは、もとより、いう迄もない。そうして、或る事項の記載がこの禁止に牴触するかどうかは、われわれの良識に訴えて決するの外はない。さて、本件起訴状には各被告人につき所論のごとき冐頭記載があり、就中被告人海老坪宏については、「自動車売買業者間に無登録の外国製乗用車が売買せられ、その登録を得ることに奔走しているのを奇貨として」、「これを販売して利得を得んことを企て」、「用紙数十枚を作り」等の文言を用いた記載があるが、これらはすべて本件自動車登録証および自動車検査証の僞造を敢行するに至るまでの経緯もしくは事情を明らかにすると共に、かたがた本件公文書僞造罪の成立に必要な行為動機としての、行使の目的の内容の具体的特殊性を説明したものと認むべきであつて、訴因を明示して記載さるべき公訴事実の指摘として、むしろ相当な措置であつたと解すべきである。右の文書を用いた記載部分を捉えて刑訴法第二五六条第六項の規定に牴触すると主張するのは、却つてわれわれの良識に副わない憾みがあり、所詮は独自の見解というの外はない。

(説明)

刑訴第二五六条第六項に違脊する記載は如何なるものがあるか抽象的にことを決定し難いところで具体的個々の事案に即して考えるより仕方がない。当庁の先例として「余罪搜査中で追起訴の見込」と附記したものを予断を抱く虞がないとした二六・八・三〇第二刑事部原判(二五(う)第一三四二號恐喝被告事件、高裁判例集第四卷第一三號一七六四頁)、添付の詐欺一覧表に犯行で取得した金員の使途を費消、遊興等と記載したのを前同様妨げないとした二六・九・二八第七刑事部判決(二六(う)第二二二一號詐欺、窃盜被告事件)、犯罪と直接不可分の関係にありと認められる被告人の経歴、身分、犯行の動機等相等具体的に記載することを許されるとした二七・四・二一第二刑事部判決(二六(う)第四〇六三號放火等被告事件)がある。

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